学生諸君へ
第1回 金子光晴について

 本信で取り上げている詩人金子光晴の文につき、学生諸君は、なぜそれが問題になるのか、あるいは話題になるのか、と不審に思うかもしれない。
 へえ、金子光晴に、そんな文があるんですか、と尋ねる学生は、光晴について一応は知っているから、びっくりするだろう。
 金子光晴は一時期、戦時下に抵抗を貫き通した希有の詩人などと間違った評価をされ、現在でもその神話に惑わされている人がかなりいるから、彼も戦争翼賛大勢に便乗していた詩人ですよ、と私などがクレームをつけると、頭がおかしいのとちがうか、などといわれる。
 中野孝次(1925?作家)は、頭がおかしいを通り越して、わたしのことを「パリサイの徒」ときめつけている。
 反戦詩人が神国話をしたり、日本の少国民はヒットラーユーゲントに負けてはいけない、などと檄をとばすのは、誰が考えてもおかしな話であり、戦後に書きかえた作品を戦時下に発表したなどと嘘をつかれて、その嘘を信じてしまうほうがよっぽど「頭がおかしい」ことに気がつかないのだから困った話である。
 このあたりのことを研究するなら、未来社から上梓した『空白と責任』あたりを読んでほしい。絶版書だが図書館にはあるだろう。

 愛読(または愛読中)のマンガは何か、と大学生にアンケートしたら、男子の一位は井上雄彦の『バガボンド』、女子の一位が佐々木倫子『動物のお医者さん』だった。
 井上のものは現在進行中で完結していないが、原作が吉川英治の『宮本武蔵』である。しかし、それで原作が売れているといった話はきかない。
 いっぽう、佐々木のものは、シベリアンハスキー犬が値上がりしたというから、たしかにかなりブレークしたんだろう。
 そんな学生たちに「アッツ島」を知っているか、と質問したら約200人中で知っている、と答え、さらに山崎部隊のことも知っていたのは、唯の一人。
 で、理由をきいたら、太平洋戦争ゲームのシミュレーションで、だった。拙著『玉砕と国葬』を一読しなさい。

 このページは9月から本格的にたちあげます。暫くお待ちください。

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