学生諸君へ
学生へ

 パリに本部があるOECD(経済協力開発機構)が、2000年に実施した「学校生徒の学習到達度調査」(PISA)の結果を、先日(9月16日)発表した。その中の「読書傾向調査」によると、日本の高校一年生は「マンガや雑誌など短い文章を読む生徒の割合が最も高く、小説など長く複雑な文章を読む生徒の割合は最低」だそうである。  OECDは1961年9月に設立され、加盟国は現在30カ国だが、日本は1964年から加盟している。この PISA調査に協力した国は27カ国であった。対象生徒は15歳の約265000人で、日本では国公私立133校の高一年5300人がアンケートに回答している。小説、伝記、ルポなどの文章が長く、難易度が高いものを読む頻度が、各国平均22.2%に対して日本は最低の3%というから驚く。逆に、文章が短く難易度の低いマンガ、雑誌、新聞などを読む頻度は、各国平均が28.3%に対して、なんと74.4%で一番だという。  これは深刻な問題である。私の本は、今にまったく読まれなくなるのだろうか。今春実施した私のアンケート「最近読んだ本を三冊あげなさい」に150人の大学生が回答してくれたが、読書といえる回答を寄せたのは10人ほどだった。  マンガを読むのもいい。テレビゲームに興じるのもいい。時間をかけて足の爪にまでペンキを塗りたくるのもいい。何をしてもいいが、大学生であることを思い出したら、読書にも関心をよせてほしい、と希望するのは、おじんくさすぎるだろうか。にくまれついでにいうが、週刊誌を読むことは「読書」とはいえない。
 

 最近新設した「余話」でもふれたが森暢平の『天皇家の財布』(新潮新書)、小森陽一の『天皇の玉音放送』(五月書房)、R・B・ステイネットの『真珠湾の真実』(文藝春秋)などが私の最近読んだ本だが、どれも、それなりに面白かった。『天皇家の財布』は、中でも特に面白かった。ほとんど知られていないことが、いっぱい書かれている。皇居の水道、電気、ガス代については余話でふれたが、目を剥くようなことがいくつもある。たとえば日本の法律や条約などの公布文には天皇の印鑑(御璽)がおされるが、その朱肉は30万円もする。天皇の印鑑は9センチ角、重量3.55キロの金であるが、だからといって30万円は高い!! 『天皇の玉音放送』は、これまで聞き取りにくかった天皇の放送(1945年8月15日に放送された敗戦の詔書の朗読)を、雑音処理などを施して聞きやすくした特製のCDつきである。読書にはあたらないが、このCDをしみじみ聞くだけでも意味がある。私は読む際に邪魔になるので、ビニール袋に入っているCDを表紙から引き離したが、(表紙の裏に厳重にのり付けされている)、おかげで表紙裏は剥がし跡の残る惨めな姿になった。本の流通の際、CDが落ちたりしないようにとの配慮だろうが、この造本はいただけない。最後の翻訳書は、1941年12月8日の日本軍によるハワイ奇襲攻撃が、実際はかなり前からアメリカに察知されていたことを、公文書を例示して証明しているもの。日本海軍の機動部隊が一冠湾(ひとかっぷわん)に密かに集結してハワイ攻撃をめざしていたことなど、アメリカ側は1941年11月18日に、知悉していたとは、びっくりした。アメリカ大統領は「日本がだまし討ちをした」と力説したが、あれは嘘だったのだ。



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